「 ア ル 」
彼女はそう言って、彼のひんやりとした身体に触れる。
小さな腕を、大きな彼の腕に巻きつける。
「」
「アルの身体は気持ちいいわ」
「」
「冷たくて、暖かくて、とても人間らしい」
「」
3回目、彼女はやっと、彼を見上げる。
「、放して」
「いや」
「」
「だって、離したら行ってしまうでしょう?」
そう言って、彼女はまたうつむく。(彼女なりの引き止め方、困ったものだ)
「、でもぼく、探しに行かなくちゃならない」
「・・・・・・わかっている、けど」
それでも彼女は、絡めた腕を解こうとはしない。
「さみしいわ」
彼女がぽつりとつぶやいた言葉。
彼女がそれを本気で言っているのだということが、つかまった腕から流れ込んでくる。
ほんとうに、困ったものだ。
「」
それでも彼女は、その表情を崩さずに、もう一度言う。
「とても、人間らしい」(だから大好きなのよ、わかる?)
ちくちくと痛むような縫うような何ともいえない気持ちが、彼の中を占領した。
この言葉を口にするために費やした努力は、並大抵じゃないことを理解しているから。
(だって仮にも鎧姿で)(仮にも肉体が無くて)(仮にもなにも感じなくて)
「アル、大好きよ」
胸いっぱいに広がった想いを思い出すのは、いとも容易いことだった。
(今は只、彼女の温度を身体で感じられる日が早く来ることを祈るばかり)