の境地はどこにある





   強く、強く掴まれた手首が、ギリ、と悲鳴を上げた。
   あまりの痛みに、小さく痛いと声を上げた。
   しかし掴んでいる本人はそれに構うことなく手首を握り続けた。
   「隊、長」
   声をかけてみても、彼は全く反応しない。
   「隊長、朽木隊長」
   名を呼ぶと、彼はやっと顔を上げた。
   「手、痛いです(離してください)」
   やっとのことでそう言うと、彼は何も言わずにゆっくりと名残惜しそうに手を離した。
   そのゆっくりとした一連の動作と共に手に血が廻っていくのが解って、思わず眩暈がした。