手が汚れたって構わない。だって彼はわたし以上に酷く汚れている。まるで目を覆いたくなる情景。ひどいね。でもわたしは目を覆ったりなんてしないの、だってあなたの死に際(もしくは死体)はしっかりこの目で見て置こうって決めていたもの。(それがどんなにおかしなものでも!)


「・・・冷たい」


彼の頬にそっと手を添えると、ひんやりとした体温が伝わってきた。あなたの身体は、もう体温を上げて血をめぐらせる事も出来ないのね。わたしの温度はあなたに伝わっているかしら?寒いのなら、わたしが暖めてあげる。


今思えば、あなたは優しさの塊だったわね。暴言を吐くところなんて一度も見たことが無かったわ。わたしが上官の悪口を言った時も「そんなことを言ってはいけないよ」と笑って注意するような人だったものね。(その笑顔にひどく安心させられたのも事実)


どうしたのかしら、胸に穴が開いてしまったみたい。ひどく寒いのよ。(虚ってこんな感じなのかしら)きっとこの胸の穴にはあなたが住んでいたのね、あなたが居なくなってしまったことによって住人がいなくなってそれでぽっかりとしてしまったんだわ。


もう日が傾きだしましたね。卯の花隊長が困ってこっちを見ている。(だってわたしは、あなたが死んでからずっとあなたを抱いているんだもの)あなたの血は、風にさらされてもうすっかり乾いてしまったわ。触っても手につかないのよ。(これではあなたばっかり汚れてしまう)あなたの笑顔(もしくは声など)を懐かしむ時間はもう無いようです。卯の花隊長が、ほんとに困ってるみたいだから。(そういえば知っていた?死後硬直も、しばらくするとまたゆるむんですって)


わたしはもうあなたに逢うことは無いのね。死神は死んだらどこに行ってしまうのかしら。そろそろ卯の花隊長に任せたいと思います。あなたが死んだ原因・犯人などを、調べ上げて欲しいです。


出来ればもう汚れたあなたは見たくないわ。だからわたしはあなたにさよならを言うの。ありがとう、さよなら。どうぞやすらかに。


わたしの痛みを、全て込めて。