暗くて寒いなんて、一体自分がいまどこに居るのかすらわからない。一瞬の出来事で、気付いたら自分はここに居たのだから。ここはどこ?と聞いたって、彼は決して答えてくれない。 (こわい よ) 「ねえ、帰りたいって思わないの?」 「思わへんよ」 「どうして?ここはこんなに寂しげなところなのに」 「僕は自分の意志でここに来たのやもん。君と違ってな」 「・・・そうね」 じゃあどうしてあたしはここに居るのかしら?あたしはここに来たいと望んだことは無かったのに。(誰かがあたしの代わりに望んじゃったのかしら) 「あなたは違っても、あたしは帰りたいの」 「へえ」 「ねえ、どうしたらここから出られるの?どうしたら帰れるの?」 「さあねえ」 「まじめに答えてよ!ここはどこなの、もとの場所に帰してよ!」 彼があたしの唇にす、とその細い指をあてた。 「あんましゃべると、殺されるで」 どうせあの人の気まぐれでしかないんやから、ね 彼、ギン、は、僕は何も知らんよと言ってあたしの前から居なくなった。 |