どうして青空を作ったのよ。あたしは夜空しかないこの世界が大好きだったのに、大好きだったのに!あたしみたいなできそこないの破面じゃきっともうお目にかかることはないでしょうね、マイロード藍染。決して夜が明けることもなければ、決して日が沈むこともない世界。ひどいジョーク。








「グリムジョー、壊してよ」
「あ?」
「こんな世界、壊してよ」
「知るか、自分でやれ」
「そんなことしたらあたしが怒られちゃうじゃない」
「てめェ、俺だったらいいのかよ」
「だってあたしじゃないもの」








このアマ、と言ってグリムジョーがあたしの肩に爪を食い込ませる。いたい、いたい、その爪でこの世界を壊してくれればいいのに。あんただったらそう難しいことじゃないでしょう?ねえ十刃様!あたしじゃこの壁を突き破ることさえできやしないわ。あたしがグリムジョーに爪を立てたって、きっと痛くも痒くもないだろうし。世界をぶっ壊すにはあたしは非力すぎる無力すぎる影響力なんて皆無なのよ!いてもいなくても、きっと誰も気づかないわ。天蓋の青空は孤独を際立たせるの。嗚呼、忌々しい!夜だけは、夜だけが、孤独を隠してくれるの。ひとりだって安心できるのよ。ああでもこんな気持ち、劣等感なんてないあんたにはきっとわからない。








「ばか、グリムジョーのばか」
「んだよ」
「どうしてこわしてくれないのよう」
「うるせえな」
「いたいよ、はなして」
「・・・・・・」
「グリムジョー」
「・・・」
「それとも、あたしを壊すの?」








グリムジョーが一段と強く力を込めた。肩が砕けそう。無力な上に肩を砕かれてしまったら、もう生きていけないね。壊すなら中途半端ではなく最後まで粉々にしてほしいな。もう二度と青空を見なくていいように。朝なんて訪れないように。グリムジョーが太陽のような人じゃなくて本当によかった、もしそうだったらあたしは絶対にグリムジョーに近寄れなかったから。孤独な王様。あんたは夜をひとりで背負っているのかしら。あたしもその夜の中に紛れたい。みんなしんでしまった彼の従属官、きっと彼は決して忘れない。あたしもそうやってあんたの中に居続けたいな。








「てめえは、何がしてぇんだ」
「グリムジョーに忘れられたくない」
「・・・」
「もしあたしが夜に紛れても、きっとあたしを忘れないでね」








そうして肩をつかむ手の力が緩む。
愛すべきひとりぼっちの王様へ
ひとりぼっちがふたりになれば、ふたりぼっちになれたのかしら?





夜のニルヴァーナ