彼はひとりで居ることを恐れている。足りないものを埋める術を知らない。 egoism 彼の周りはいつも白いもので埋め尽くされている。本当よりも広く見える部屋。見えるものを遠ざける虚しさ。白とは虚無だと思う。彼は虚無で固められている。恐れているものを身に纏っている。 彼はこの部屋で何を待ち続けているんだろうか?私には知らないことが多すぎる。ただ私は彼の名前が美しいから口に出すのが好きだし、埋める術を知らないのなら勝手に埋めてしまいたいと思っている。冷たくて暗い海の底に2人で沈めたならば。もう何も待たなくていいの。抱きしめたい。 「雨竜が寂しいって言ってくれたら、私はずっとここにいるよ」 「寂しくなんかない。僕は君に何も求めてなんかない」 彼の指先はひんやりとしていた。ねえ、あなたの名前は泣いているみたいね。神経質そうな指先は私が触れることを拒む。あなたの名前は寂しいって泣いてるわ。愛を失くした子。愛に気付かない子。自分が思うよりもあなたは愛で充たされているのに(知らないの?それとも気付かない振り?)。私が名前を口にするたびに彼に寂しさを刻みつける。知らないでしょう、私がどれだけあなたを想っているか。埋めたいものであなたの穴を広げていってしまう悲しさを。私には埋められない。あなたは埋める術を知らない。ねえ、何を待ち続けているの? 「もう放っておいてくれ。僕 は 何 も 求 め な い」 「雨竜」 抱きしめてキスをしてそれから。 彼の求めているものなんて私には到底分からない。きっと死ぬまで。でも肩を濡らしたものがあなたの涙だったのなら私は許されたように思ってしまう。ここであなたを抱きしめることを。私を選んでくれたのかと思ってしまう。たとえ他に選択肢が無かったのだとしても。 埋められないなら刻ませて。心臓に直接、私が居るのだということを刻みこみたいの。 20120606 |