「一体どこまでが本音なんですか?」


「きみは他人にペラペラ本音話すん?」


「あなたほど嘘つきではないつもりですけど。」





心外やねぇと市丸隊長が言った。これもどうだか。
彼は私に本当のことなんて言わない。自分の領域には踏み込ませないくせに知らず知らずのうちにこちらは領域を侵されている。気付かないうちに確信に触れる一歩手前まで近付かれている。その手で逆撫でをし、その舌で耳を犯し、その眼で身体を凍りつかせる。わたしはそれを上手くかわす術も、受け入れる術も知らない。





「本当気分悪いですよね。みんなかわいい子ぶってて、馬鹿みたい。」


「きみはかわい子ぶらんでもええの?」


「媚びを売るのは死ぬほど嫌いなんです。」


「かわいくあらへんね。」


「そりゃどうも。」





何でこんな腹が立つんだろう。市丸隊長に対してなのか?自分に対してなのか?それすら解らない。
彼は思想の読めない仮面のような笑顔のままだ。





「何も渡す気が無いのなら、最初から期待させないで。」





市丸隊長が紡ぐのは嘘ばかりだ。わかってる。それでも何度も信じ込まされて、まだ学習しないわたしのままでいる。
わたしはいったい彼の何を知った気でいるの?











「愚かな子。何かが欲しいんやったら、それ相応の何かを差し出さなあかんよ。君は僕に媚びすら売らへん。そんな君が、僕に一体何を差し出せる?」








(100216 加筆修正130415)