「どうして?」 「俺が消したからだ。」 「どうして」 「いまさら聞く必要があるのか?」 ああ、わかっていた。全部わかっていた。でも気づかないふりをしていた。認めてしまったら、そこで終わりのような気がして。 わたしはいつまでもあの人の傍にいたかった。いつまでもいつまでもいつまでも、それこそこの夜だけの世界に日が昇ってしまうまで。ただひらすらに安寧を願っていたあの人の幸せを、わたしはずっと願っていた。あの人が笑うと春のように暖かな気持ちになれた。戦うあの人は凍てつく冬のようだった。ずっと幸せでいてほしかった。戦うなとは言わない。この世界ではそれは望めない。ただ、幸せでいてほしかった。 それだけなのに。 「さあどうする?。」 わたしの幸せの全てをこの男が消してしまった。 もうどこにもない、わたしの愛! 「ネリエル!」 ああ、走らなくちゃ!走らなくちゃ!走らなくちゃ! FLEE (090729 加筆修正130415) |