altruism








私ではあなたを幸せにできないことは明白だった。もう長いこと。だってあなたに幸福を与えることができるのは、私の知る限り一人しかいなかったから。そしてそれは私の知る限り、この世で唯一の"無償の愛"だった。だけど彼女は神様ではなく人間だったから、総ての人にそれを与えることは不可能で、あなたはとうとうそれにあやかれなかった。





「あなたは唯一あなたを幸せにできるひとを自分の意思で手放したんですね」
「元から僕の人生に幸福なんて存在しやしない。僕の人生は、この血を途絶えさせないためだけにあるのだから」





どうして解らないのだろう。あなたはこんなにも愛を捧げられているのだということを。あなたの不幸を願う人なんてこの世に居やしないのに。あなたは若くて賢くて美しいのに、全てを諦めた顔をしてる。一体何処へ向かっているのだろう?私はあなたを独りになんかしたくない。けれど私ではあなたを幸せにできない。だってあなたは、私にそんなことをひとつも望んではいないのだから。





「最後に選ぶのは私じゃなくていいから、幸せを見つけられるまで傍に居させて」
「僕はそんなもの必要としていない」
「それならそれでも良いから。でも、独りで生きようとすることはやめて下さい」








あなたはきっと安っぽい言葉は嫌いだし、目に見えないものは信じない。それでも私は、あなたは愛されているのだという事を示し続けたい。私の存在がその証明となるように。だからいつか私が必要なくなったら、すぐに私のことは忘れて。それがあなたの本当の幸福を得る瞬間だから。








20130517