「眠れないの?」 暖色の灯りがドアのそばに立つネリエル様とベッドに入ったあたしの横顔をぼんやりと照らす。ネリエル様の横顔はギリシャの彫刻のように美しい。笑顔は少女のように可愛らしい。ああネリエル様、あたし、見てしまったの。 「いつも寝付きのいいあなたが、めずらしいわね」 「ネリエル様、目を瞑ると嫌なことを思い出すの。まぶたから離れないの」 あなたのその美しい横顔と少女のような笑顔はきっと多くのオスを魅了している。あなたは知らないでしょうけれど。望むとも望まずとも、あなたはこの世界にセックスシンボルとして君臨してる。あたしたちに生殖能力なんかないのにね。でもそんな1人で慰めてるようなオスの事はどうでもいいの。そんな見えない相手の事なんか。あたしが今まぶたから離れないのは、今日この目で見てしまった事実、だけ。 「大丈夫よ、。あなたが眠れるまで、私がここにいてあげるから」 「ありがとうネリエル様。・・・お願い、手を繋いでて」 「ええ。おやすみなさい」 「おやすみなさいネリエル様」 (ああネリエル様、あたし見てしまったの。あなたとノイトラ様が、キスをしてるところを。その時のことが、どうしてもまぶたから離れないの。どうしてキスを許したの?あなただったら、そんなことさせずに終わることもできたはずなのに。ネリエル様、ほんとうはあたしもその唇にキスをしたいと思ってる。そんなこと知ってしまったら、あなたはあたしのことを嫌いになる?でもノイトラ様はあなたの手首を抑え付けるばかりで、手を握れてはいなかった。だからあたしは代わりに手を繋ぐの。きっとあなたは一生、ノイトラ様に手を触れさせやしないだろうから。あたしはあなたにキスしたりしない。だから嫌いにならないで。手を繋いだだけで役目のないはずの子宮が疼いてしまっても、それを知ってるのはあたしだけだから。) (20131012) |