Utopia











雅子ちゃんの背中はきれい。きちんと鍛えられて、白くて、無駄な脂肪なんて一切ない。私は雅子ちゃんの背中が大好きだった。きっとみんな知らない、雅子ちゃんのこんなに美しいところを。私だけが知ってる。私だけの雅子ちゃん。





「ねえ、舐めてもいい?」
「・・だめだと言っても、するくせに」
「ふふ」





雅子ちゃんの背中に舌を這わす。背骨、肩甲骨。いつかこの美しい背中から羽が生えて、私なんか置いてどこかへ飛んで行ってしまったらどうしよう。私ひとりじゃ、もう、とても生きていけない。死ぬまで雅子ちゃんと一緒にいたい。誰にも干渉されない場所で、雅子ちゃんとひっそりと呼吸していたい。





「・・・雅子ちゃん、すき」
「わたしも好きだよ」





雅子ちゃんの優しい笑顔も、怒るととても怖いところも、細くてきれいな手も、あまり大きくない胸も、すらりとした脚も、ぜんぶぜんぶ、私だけのものにしたい。そう思う私はあまりにも汚い。雅子ちゃんの背中に口づける、だけどキスマークは付けられない。私にはこの美しいひとを汚せない。





(120926)