「つめたい」
「うるせぇ我慢しろ」


ベッドの中で花宮の足が私の足に触れた。湯冷めしないようにと思ってすぐベッドに潜り込んだのに。ギラギラと痛かった夏が終わって、いつの間にか秋も過ぎて、冬が近づいていた。外では風がガタガタと窓を揺らしている。でもそのおかげできっと明日は晴れだろうし、今だって遠くに星が瞬いているのがきれいに見えるだろう。だけど寂しい同士の私たちはたった二人で手を繋いで眠る。柔らかくて温かい布団にくるまって、他愛もない話をしながら夜が更けていくのを感じる。


「お前こそ手冷てえじゃねえか。風呂上がってすぐベッド入ったんじゃねえのかよ」「冷え症だからすぐ冷たくなっちゃうの。ねえそれより、今日帰りに古橋に会ったよ。相変わらずだった」「へえ。ああ、そういえば原からメール来てたな。めんどくさくて返してねえけど」「原かわいそう」「あいつのメールは中身がねえんだよ」「ふうん。あ、明日土曜日だね。どこかにブランチ行きたいね」「土曜日なんてどこも混んでんぞ」
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こしょこしょとした会話は寝室と窓を打つ風のガタガタという音に溶けていく。私よりもずっと大きくて温かい花宮の手に私の温度も溶けていく。そうしていつしか境目がなくなって、私たちはひとつの塊になって眠る。


「ずっとこうして、寂しくないままでいたいね」


前触れもなく訪れる寂しさは簡単に私を殺そうとする。食事をしている時も。友達と話している時も。映画を見ている時も。キスをしている時でさえも。そのたびに私は頭から爪先まですっぽりと布団をかぶって、もう二度と外に出たくないような気分になる。だけどこうやって手を繋いで溶け合っている間だけは。誰も私たちに干渉しない。私たちは世界でたった二人になれる。


「もう寝ろ」
「うん。おやすみなさい花宮。良い夢を」
「ああおやすみ





朝が来るのが怖い。このままずっと、手を繋いで眠っていたい。もしこのベッドの中で二人で果てることができたなら、私たちは明けない夜を迎えることができるの?何百万もの星たちに祝福されて、夜を彷徨い続ける。そんなことを思いながら眠る私を、あなたはきっと滑稽だと嗤うだろうけど。








The starlight set.





(121101)