ぎゅっと引き寄せたときの彼女の香りが気に入らなかった。この間とも、その前とも違う香り。知らない奴の煙草の香りか、それともこいつの煙草の香りか。














「いったいどこの男に抱かれていたんだい、うん?」





「さあ、誰だったかな。そんなこと聞いてどうするの、デイダラ?」





「いや、どうもしねえけど、・・・うん」














ああ、この女から立ち上る香りが石鹸の香りだったらどれだけ気の休まることか!この女を抱いた男達をみんな殺して回れたらどれだけ安堵できることか!
ぜんぶぜんぶ、叶うはずの無い話ばかりだ。














「オイラはこんなに毎日のこと想ってるのにさ、うん」





「じゃあ毎日来てくれればいいのに」





「んなことしたらさすがにサソリの旦那に殺されちまうよ、うん」








のように優しく綺麗に笑う。


ああ、お前はその表情を他の男にも見せているのかい?他の男にも、そんな風に優しく微笑むのかい?ずっとずっと、この腕の中で微笑んでいて欲しいのに。いったいどれだけの男が、お前のことを想っているのだろうか。そう考えるだけで、心臓をわしづかみにされたような気分になる。














「オイラのものになっちまえよ、うん」





「毎日逢いに来てくれたら考えてあげる」





「そりゃーどうも」














遊女は決してこころを見せない。そんなお前のこころが欲しいと思ってしまう自分は、ただの愚か者なのだろうか?
どんなにぎゅっと抱きしめても、目の前に在るのは見知らぬ煙草の香りを漂わせた愛しい愛しい女。どんなに綺麗に微笑みかけてきても、それは自分だけのものじゃない。


ああ、もう どうしようも ない ・・ ・   狂おしい!
































「すきだ、愛してる。うん」




















ありがとう、


そう呟いたお前を目に焼き付けたまま死んでいけたら、いちばん幸せなんだろうな。











明 か り が


照 ら し た


そ の 頬 を 、


指 で な ぞ っ て