polvere di stelle













可愛い可愛い真っ白な猫足のバスタブちゃん。どこまでも終わらない真っ白で透明な可愛いバブルちゃん。バラの花びらはどこへ沈んだかな?泡に飲み込まれちゃってても、あたしはあんた達のこと愛してるよ。真っ赤な花びらをいちまい、ぱくりと口に放り込んだ。泡独特の苦い感じ。ママと初めてケーキを作った日、バニラエッセンスの甘い香りにうっとりとした日、その味に驚いてバニラエッセンスを瓶ごとボウルの中に落としてしまった日、を思い出した。あんな気分。そのものを愛していた分だけ、裏切られたときの気分は大きいね。もぐもぐごくん。バラの花びらはあたしの一部になりましたとさ。「、ここにいるんさ?」「いませんよ」「おじゃましま〜す」あたしの弱虫ラビットちゃんが浴室へ入ってきた。「なにかご用ですかラビットちゃん」「だからラビットじゃねェって」「用が無いなら消えてよラビットちゃん」「は冷たいさー」ラビットちゃんはそう言って、バスタブにもたれかかってくったりと座り込んだ。疲れきったラビットちゃんの髪はかさかさして痛かった。「ラビットちゃん、いつ帰ってきたの?」「ついさっき。いちばんにに会いに来たんさ」「報告もせずにお風呂でリラックスしてるレディーの邪魔しに来たの?さいあくだねラビットちゃん」「、俺泣いちゃうよ?」ラビットちゃんは本当に悲しそうな顔をしてあたしを見上げた。あたしは何だか嬉しくなって、ラビットちゃんに頭からざぱんッとお湯をかけた。うわッと驚くラビットちゃんの髪をシャンプーでがしがし洗った。「行動が気紛れすぎて力抜けるさー」「だってラビットちゃんの髪の毛、がさがさして痛い」「砂だらけのとこ行ったからなぁ」ラビットちゃんはそうやって、あたしの知らない土地の話をした。あたしは ふうん とか へぇ とか生返事ばっかりしながら、ラビットちゃんの髪をがしがし洗った。「、聞いてる?」ラビットちゃんがきょとんとしてこっちを見た。きいてるよ、と言って、あたしはラビットちゃんのシャンプーの泡をシャワーで洗い流した。「わっ待ってッ 目に 泡、が・・・」ラビットちゃんが目をごしごし擦りながら言った。あたしはもう一度泡を流した。「ごめんねラビットちゃん、痛かった?」あたしが聞くと、ラビットちゃんは擦って赤くなった目であたしを見上げた。赤い目のラビット。「ん・・・大丈夫さ」「ごめんねラビットちゃん、ごめんね」あたしはラビットちゃんの赤くなった目の瞼にキスをした。何度も何度もやさしくキスをした。そうするとラビットちゃんはほんのちょっと顔を赤くして、すごく嬉しそうに笑った。釣られてあたしもちょこっとだけにっこりした。「あーなんか帰って来たって感じするさー」「よかったねラビットちゃん、でも浴槽には入れてあげないよ」あたしは愛用しているバラの香りのするリンスを手のひらにいっぱい出して、ラビットちゃんの髪をそっと撫でた。もうラビットちゃんの髪はかさかさした感じはしなかった。「、俺ね、」「うん?」「任務に行ってる最中、ずっとのことばっか考えてたんさ」「任務に集中しなさいラビットちゃん」「ずっと、に会いたいって思ってた」「・・ラビットちゃん、」「、あいたいかったよ、さみしかったよ、あいしてる」ラビットちゃんは、赤くなった目から一滴涙を ぽとん と落とした。か弱いラビットちゃんは、このままぽっきり折れてしまいそう。あたしはラビットちゃんの涙の痕を舌でなぞって、リンスをシャワーでザーザー流した。「ラビットちゃん、あたしはラビットちゃんがいない間、ラビットちゃんのことばっかりは、考えなかったよ」「、え・・・」「だってお天気だって気になるし、お夕飯のおかずだって気になるし、リナリーのスカートの丈だって気になるし」「・・・・・・」「でもね、ラビットちゃんがあたしのすぐ近くにいてくれなくて、すごく、寂しかったよ」「・・・ウソ」「ウソでいいの?」「よくないさ」「ラビットちゃん、やっと会えたね」あたしはラビットちゃんをそうっと抱きしめた。このか弱いラビットが崩れ落ちてしまわないように。ラビットちゃんは小さく嗚咽をもらして、泡だらけのあたしをぎゅっと抱きしめた。あいたかったあいたかったあいたかった!何度もそう繰り返すラビットちゃんの背中を、あたしはそっと、ゆっくりと擦った。


「おかえりなさい、あたしの愛しいラビットちゃん」