BLACK












男の人が煙草を吸う仕草ってなんてセクシーなのかしら!その筋の浮いた手があたしに触ってくれたらーなんてはしたない想像もできますわ♥その煙草の匂いに抱きしめられたらひどく安心するんじゃないかな。あたしをその匂いに染めて欲しいの!











「クロス・マリアン、あなたって存在自体がエロティック」
「とんだ褒め言葉だな」
「計算しつくしているの?」











ふーーー、と煙を吐き出す唇にかわいらしくバードキス。薄く開かれた唇はにたりと歪んであたしの耳元で「誘ってんのか?」と囁く。何とも言えない低音があたしの脳を揺さぶって、思わず息を吐いてしまう。愉快そうに、射抜くような目線がわたしを貫く。ああ、この男の色香にやられない女がいるのかしら!いいえ絶対にいない!











「どうしてそんなにフェロモン全開なの?それって罪よね」
「誰がこの俺を罰するんだよ?」
「あたしのものになったら許してあげる、クロス・マリアン」











そっと眼鏡を外すと、直に目線が交わった。
ああ、この人になら殺されても構わない!
この人さえ手に入れば他に何も要らない!
そんな思いを知ってか知らずか、苦い苦い煙草の味のする唇があたしに噛みつく。彼に(彼の煙草の匂いに)包まれている、それだけでうっとりしちゃう!彼の大好きな煙草の味があたしの口内を侵していって、まるでわたしも彼の所有物になったみたい♥なーんて自惚れの前にあたしはこの男を手に入れたくって仕方ないの!














「あんたのものになりたいんじゃない、あたしのものになりなさい」














まるで子供が駄々をこねているかのよう。あたしがあんたのものになればイコールあんたがあたしのものになる?子供じゃないんだから騙されないよ。一夫多妻なんて許されない世の中。そもそも妻になりたいわけじゃないし!強いて言うならペットになってくれたらなーなんて。マダムのツバメちゃん。クロス・マリアンてそんなキャラ?そもそもあたしマダムなんかじゃなーいし!











「我儘な女だ」
「あんたのこと考えるだけでイきそう」
「シスターがそんなことでいいのか?」
「クロス・マリアン、十字架は背負うけれどきっと懺悔は聞かないね」
「十字架に祈りたきゃ他をあたれ」
「大好きな神様に祈ったってあんたが手に入るわけじゃない」
「俺は俺のもんだ」
「アーメン」




















いまどき処女を守り抜くシスターなんていないわ。懺悔室は愛を営む神聖な場所!神に祈ることよりあなたを愛することの方がよっぽど大切だもん。物足りないなら懺悔でも祈りでもなんでも捧げてあげる。苦し紛れのお祈りなんて、きっと神様も耳を塞いじゃうね。
神に見放されたらマリアン教でも作ろうかな。きっと信者は女ばかりね。
そしたらその女達をみんな神様に捧げて、あたしはシスターに戻るね♥














VERONICA